名古屋大学は、「融合領域を開拓し、未来の知の創出や社会実装を担い、グローバルに活躍できる博士人材」の育成を目指しています。
「名古屋大学融合フロンティアフェローシップ事業」は、本学博士課程に進む学生が博士後期課程3年間を通じて、深い学識と卓越した能力を身につけ、その経験で培った様々な力を、博士学位取得後に社会の多様な場で発揮するために、研究と生活を両面からサポートする制度です。この制度を通じて、輩出する博士人材が、我が国の継続的な学術の深化や、次世代の科学技術・イノベーションの創出を担い、活力ある社会の構築に寄与することを期待するものです。
本制度は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」と名古屋大学により実施されるものです。
分 野
4つの分野を設定して、博士人材育成を強化します。
アジア未来創造分野
分野の目的・育成する研究者像
アジア諸国との共生を志向し、SDGsへの貢献と豊かで活力ある社会の構築を目指す学生に対して、融合領域の研究教育に関わる機会やプログラムを提供することにより、国内外との共同研究を通じ、未来の知の継続的創出や社会実装を担うグローバル博士人材を育成する。
履修プログラム
NUMIRAI2020では、「様々な場面でリーダーシップを発揮し人類の幸福に貢献する『勇気ある知識人』の育成」に取り組み、「アジアと共に学び、男女共同参画など多様性を尊重する」ことを謳われている。
本分野においては、その実現のため、国際的な研究者としての基礎学習を施し、国内外の多様な専門家との共同研究を通して分野横断的連携研究の研鑽を積ませる必要がある。この観点から、研究力向上のために、リーダーシップを発揮する研究者に求められる知識を習得することを目的とした「博士教養科目」、国際的に分野横断的連携研究の研鑽を積むことを目的とする「国際実践科目」、フェローのキャリア開発のための「キャリア形成科目」をそれぞれ以下のとおり提供する。
- プロフェッショナル・リテラシー 1
- 研究者倫理、男女共同参画等について学ぶ
- プロフェッショナル・リテラシー 2
- 英語論文執筆、公的資金獲得等について学ぶ
- 研究インターンシップ
- 企業・国際機関等で実施するインターンシップに参加する
- PBL
- 企業等の課題に学生チームで取り組む
- プロフェッショナル・リサーチ
- 国際学会発表、共同研究、研究費の共同申請に取り組む
- グローバルトップレクチャー
- 企業や国際機関の講師から学ぶ
- キャリアパスセミナー
- 国内外・アカデミア・企業など多様なロールモデルについて学ぶ
参考:
情報・AI分野
分野の目的・育成する研究者像
モビリティ分野、創薬・医療・個別化予防、基礎医学など医学分野を中心に,人文社会学,理学,数理科学,農学など広い分野を支え、牽引し、発展させる,未来の知の継続的創出や社会実装を担い、グローバルに活躍する情報・AI博士人材を育てることを目的とする。
履修プログラム
研究力向上の取組として、情報学・医学系・工学・理学各研究科を中心とした情報・AI人材の育成に向けた博士教育における産学共創教育体制や、2つの卓越大学院(TMI、CIBoG)を中心とした情報・AI人材育成、さらには全学的な組織である、未来社会創造機構・数理データ科学教育研究センター・博士課程教育推進機構がそれぞれの有する教育リソースを共有し有機的に連携する。
また、学生に応じて、(i)博士としての基本的なトランスファラブルな能力(語学力、論文作成能力、国際的発信能力、研究倫理、知財)の涵養、(ii)将来の進む方向により、企業の研究、アカデミア等研究機関の研究、公的機関の研究や行政に触れ協働する機会を提供していく。
量子科学分野
分野の目的・育成する研究者像
量子科学分野の対象となる数学・理学などの量子基礎学理から、半導体等を用いた量子デバイス応用までの幅広い研究階層に対し、階層間を融合した学術研究を切り拓き、グローバルに活躍する卓越した博士人材を育てることを目的とする。
履修プログラム
融合フロンティアを拓くマインドを醸成するため、フェロー同士の共同研究の実施や、企業に対する研究内容のプレゼンテーション機会の確保などに取り組む。加えて、ジョブ型インターンシップ制度も活用する。また、自立を促し企画力を涵養するため、特別研究員事業への応募を支援する。
本フェローシップ事業では、量子という軸で学術融合する新しい場を提供する。部局横断的な共同研究を創出する名大100人論文、理工学の学生が自主的なテーマを設定する最先端理工学実験などの既存の枠組みを活用し、異なる専門を有するフェローが、小規模な共同研究チームを作り議論する場を設ける。
これにより、量子理論や素粒子等の基礎を専門とするフェローは、自身の研究と社会との繋がりを知る機会が生まれる。一方、応用を目指すフェローにとっては、量子の基礎学理に触れることにより、より深い物理の本質を考え、新たなシーズを生み出す可能性が出る。
この共同研究の成果発表の場として、本学が有する国内最大の産学連携組織GaN研究コンソーシアムを活用する。このコンソーシアムのミッションの1つは博士人材育成であり、研究会やシンポジウムを定期的に開催し、量子分野の博士学生の育成に貢献してきた。本フェローシップ事業を契機として、数学・理学を専門とする学生にも門戸を拡大し、これまで触れる機会のなかった産業界からの視点を認識する機会を与えることで、総合的な研究力の向上を図る。
マテリアル分野
分野の目的・育成する研究者像
我が国のマテリアル革新の原動力となる人材育成を目的とする。電気電子・機械・情報・エネルギー・生物・医療・農業などの多分野とマテリアル科学の融合領域を開拓し、基礎学理から応用に至る上流から下流までを俯瞰的に捉えて革新的プロダクトを生み出すために必要な研究力を有して、自身のキャリアを切り拓ける卓越した博士人材を育成する。
履修プログラム
本分野独自の取組として、フェローを我が国の革新的マテリアル開発にて真に活躍できる人材として育てるため、大学院共通カリキュラムに加えて、本学の卓越大学院プログラムで進行中のカリキュラムの一部を開放する。
これらを「選択必須」または「選択」として設定し、ポイント制を設ける。各自のキャリアプランに合わせて参加することで、マテリアル革新を実現する人材に必要な研究能力の向上、俯瞰的な視点と幅広い知識の獲得を可能にするとともに、キャリアパス支援となる「出会い」と「気づき」の場を提供する。
- トランスファラブルスキル研修、企業関係者等外部の関係者を招いた研究発表会
- インターンシップ、海外派遣(学会発表・研修・留学)、学生チーム企画、共同研究の実施または研究費の共同申請、研究の賞獲得、融合研究の実施、リトリート研修
カリキュラム
プログラムは内容に応じてポイント化されており、フェローは修了要件として、各分野で提供されるプログラムと、学生が独自に行うインターンシップ、学会発表、論文発表等を組合わせて3年間で30FP(フェローポイント)以上の取得が課せられます。
期間中に年度評価により標準修業年限内の学位取得、融合研究・国際共同研究、語学能力などの確認が行われます。
【その他必須プログラム】
語学研修/博士人材交流会への参加/メンターとの交流/日本学術振興会特別研究員への申請 など